|
|
深層の時間 渡邉 理恵 「訪問看護の現場で、言葉にならない苦しみや悲しみの前に立ち尽くすとき、時計の針が刻む時間とは異なる、もう一つの時間が確かに流れていることを、私は何度も感じてきました。その人とともに過ごす沈黙の時間、語られない思いを受け止める時間—それが私の「深層の時間」です。 小川にかかる板の橋を渡って患者さんが住む古民家を訪れる、古い公営住宅の階段を新聞の束を抱えて上り、患者・家族とともにリハビリの工夫する、不安や苛立ちで声を荒げる患者の入浴を介助し、束の間の心地よさを届ける、老いを噛みしめる老画家のそばで、その言葉に耳を傾け、静かな時間を過ごす-作者が語る9つのものがたりが、訪問看護の現場でしか知ることのない、今を生きる喜び、悲しみ、苦しみ、救いを伝えてくれる。
|
