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2001年2月、春のはじめの寒い日に、公団住宅の一室を間借りして、
オークションで購入した中古のパソコンではじめた図書出版木星舎ですが、
11年目を迎えた今年、少し広くて天井が高い、蔦のからまる古いアパートに事務所を移転しました。
せっかくの機会ですから、少しふりかえって「about 木星舎」考えてみると、
いくつかのジャンルに色分けできるように思います。
最初に出版した本は『緩和ケアをはじめよう ゆるやかなギアチェンジ』。
そこからはじめて今に至るまで「緩和ケア」が小社の重要なジャンルです。
そして十年が過ぎた今、
その一点から在宅ホスピス・緩和ケア、在宅介護へと大きく展開してきたことに気づきます。
医療・介護が激変する十年を、出版を通して見続けることが出来たのは編集者として幸運だったと
思います。現場の最前線で働き、道を切り開いていく人たちに常に接することができるのは、
とてもエキサイティングです。
木星舎は医療書の出版は(今のところ)できないと思っています。そのかわり診る側よりも診られる側、
看護される側、介護される側に足場をおいて、本を出していきたいと思っています。
心理の分野も大切なジャンルです。主に、緩和ケアにたずさわる心理士の声を本にしてきましたが、
そこに携わる心理士の絶対数が急増してきました。心理士が読み解き、
つないできた作業に対する多方面からの期待とニーズが増えてきたことに気づきます。
老病死というテーマの前に「生」があります。
命を迎えることは死とともに、生き物の最大のドラマです。死は自然の摂理ですが、
命を迎えることは、ある意味、生物としての究極の目的です。
そして、生まれてきたものは育てなければなりません(ちょっと厄介……)。
生きにくくなった子供たち、育てにくくなった母親を応援することが出来たら、それは存外の幸せです。そんな本を出しつづけたいと思います。
そして最後に生物学と絵画と文学をあげます。ホント言うと、この辺が一番やりたかったこと。
黒田奨学会という日本では希有なスカラーシップをもつ団体を通して、
福岡藩が近代科学に貢献した鳥類学、博物学に接することが出来ました。
黒田長禮公、黒田長久公(日本野鳥の会元会長、山階研究所元所長)両公の地道な鳥類研究の一端に
触れることが出来たのは幸運という他ありません。彼らは環境保護や自然保護の道を開いた先駆者です。
その上にある、現代の生態学であり、生物学であると思うのです。
昨年(2010年)出版した『世界小説論』は敬愛する目加田さくを先生の遺作となりました。
九十歳を超えて渾身の力で世界の小説の流れを読み解く、その気迫、後進に道を開く愛情、
その偉業の一端に触れることができました。図書館でもかまいません。どうか読んでほしいと思います。
私が初めて出版社の扉を叩いた三十数年前、面接で問われたのは
「あなたは文章を編むという仕事をどう考えていますか」でした。
今、少し答えられるような気がしてきました。
たぶん「私たちはそこにある文章の字面を編むのではなく、その下に流れる文脈を汲み取り、
本というかたちにしていっているのだと思います」
 それはきっと、誰もが人と真摯にかかわろうとするときに、
それぞれのスタイルでやっていることなのだと思います。
 私たちは、それを本というかたちで表したいと思っています。文章に限りません。
生きている時代の文脈を私たちなりに読み取り、
文章にしていく仕事を丁寧に続けていきたいと考えています。そして、一人でも多くの人の共感を得る本、時間に耐えうる本をつくっていきたいと願います。

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